始めに言っておきたい事がある。 ディーネととりあえず呼んでいる、この存在は、人間ではない。 確かに、人型をしてはいる。見かけ上、10代後半から20代前半ぐらいの女だ。 が、その体に骨は無く、間違いなく水だけで体を構成している。 その体には、脂肪もタンパク質も炭水化物も無い。ただの水だ。 水面張力を無理矢理に上昇させて、人の形を保っているのだ。 そのため、体を自由に形を変える事ができ、そのパターンはディーネの思うがままだ。 無限にあるといっていい。 体を細い糸状にして、直径一ミリ程度の隙間から抜け出すことも、手をナイフ状にする事も、手をロケットのように噴射させる事や腹から同じくロケットのように体成分である水を発射させる事、さらには興味深く思った物と同じ形や色と体を変化させる事が出来る。 人の顔を真似たことも出来たほどだ。また、体の色も変えられる。 本人にやる気さえあれば、他人と入れ替わる事の出来るだろう。 そう、コイツにやる気さえあれば。 コイツの性質と言うか性格は、やる気も無く記憶力もまた皆無と言う事だ。 言葉は理解する事は出来る。 が、言った事を忘れるのだ。それも瞬時に。 だからいつも同じ事を聞き返す。 ついでにわかりきった事まで聞き返してくる。 コイツの方は涼しげな顔で聞き返すものの、こっちの腹は煮え繰り返る。 まともに付き合うと、ストレスは溜まる一方だ。 コイツとの付き合いに得はそんなに無い。時たま新たな考察が出来る程度だ。 このディーネについては、何者なのかと言う問題が付きまとう。 ある程度の知能はあり、言葉を解するが、体は水でしかできておらず人間を始めとする動物ではない。 もちろん植物でもない。 微生物の集合体と言うのも考えられない。 何らかの拍子に水術力が凝縮され、意識を持ったのは確かだが、そこまでしかはっきりとわかっている事が無いのだ。 実はサブカルチャーのUMAを扱った雑誌にもディーネは載っており、スライム・レディとか名づけられている。 不形態のディーネの特徴を良く表した言葉だと思うが、なぜどのようにして生まれたかについては、ある女性の恨みが凝縮して生まれたとか書かれている。 想像力の無い奴がボケた頭なりに考えた風だが、ある種の意思がそうさせたということは考えられる。 もっとも、何の意思なんだよといわれたら困るんだが。 信頼の出来ない筋からは、精霊だとも言う。 水術力が凝縮されたのがディーネであり精霊だというのだ。 精霊は「この世界にはもうない場所」で生まれ、人の形や動物、その辺の物の形になるとか言うのだ。 で、他の精霊は見えなくなった物の、ディーネだけはその場所に長くいたために、未だにあの姿を保ち続けていると言う。 どのみち、精神エネルギー体なのは確かだ。 精神エネルギー体は過去にも現在にも何人(何体の方が正しいか?)か確認されているが、ディーネはそれらの誰よりも長く生きていると思われる。(長く生きていると言うのが不適切なら、長い間目に見えるように存在していると言い換えよう) こいつが出ていると思われる世界中の童話や民話が多々あるのだ。 コイツの研究のために記録しておいた。 これを読んだからと言って研究が進むとは思わないが、コイツがどう人々に思われていたのか、読んでみるのも楽しいかもしれない。 キーワードは以下の通りだ。 ・ 水に関係している。 ・ 身長150センチから165センチ程度のやや細身の女。 ・ 姿は基本的に女だが不形態で、どのような姿も取れる。 ・ 感情はそれほど表さないが、不安をさほど与えない。 ・ 多少の攻撃なら、びくともしない。 ・ 服を着ない。(どんな服も着ないので、今しょうがないのでビキニの水着を着せている) ・ 年齢は16,7歳〜20歳程度。 まあ、気楽に読んで欲しい。 |